貴子潤一郎『煉獄のエスクード RAINY DAY&DAY』(富士見ファンタジア文庫)

★★★★★★★★★★(オススメ!)

やっぱりこの作者は凄ぇや。

ファンタジア大賞受賞作『12月のベロニカ』から2年半ぶりの長編ですよ。『ベロニカ』が気に入った人ならまず間違いなくオススメの名作です。シリーズの1冊目なので続巻を見据えて抑えめなのかと思っていたらいやはやいやはら、これ1冊での完成度が素晴らしいです。もうラストのあたりは完全にしてやられました。

あらすじとしては退魔の妖剣に選ばれた少年が教皇庁の影の組織<エスクード>の一員となり、魔界との”扉”を封印する美少女”レディ・キィ”の護衛の任務につくことになる、という結構よくある設定。でもそこは流石貴子潤一郎。ジュニアノベルによくある話を圧倒的な筆力で説得力を持たせて全く陳腐に思わせません。それどころかラスト間際はちょっと真剣に感動した。

それにしても貴子さんは伏線の張り方とその見せ方がホント巧いなぁ。「あぁ、あれが伏線だったのか!」と思わず唸ってしまいます。

あと”スーツを着た女性”が大好きな作者が投稿時代から何度も書いていた、という女性・レイニーにも注目です。作者によると”感情の起伏が少ないクールな美女で、コスチュームは男物のスーツ。そんでもってめちゃくちゃ強い”。彼女は良いですよ、詳しくは言えませんが昔の約束のために色々な事を堪え忍ぶあたりが特に。