古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』(電撃文庫)

★★★★★★★★★★

「生きてるのって、すごくたいへんだよね。先が見えなきゃ不安だし、かと言って、見えちゃったらゼツボーだし、”未来”とか”将来”のことって、どっちにしても苦しいばっかりだよ」
「……なに言ってるんだよ、広崎……」
「だからみんな、目先のことに一生懸命になって忘れたふりをしてるけど、でも、ほんとはみんな思ってるよ――『誰かが終わらせてくれないかなぁ』って」(P45)


こいつぁキタね!


はい、俺的下半期ライトノベル大賞ノミネート作品が決定しましたよ。「”フツーの男の子”と”フシギな女の子”のボーイ・ミーツ・ガール」がテーマの「電撃hp」に掲載された6短編+書き下ろし1編。いやぁどれも素晴らしい出来ですね。私は特にタイトルにもなっている「ある日、爆弾がおちてきて」が一番好きです。次点はうーむ、どの作品も好きだなぁ(笑)


大学受験2浪目、予備校の屋上で長島が煙草を吸っていると空から女の子が落ちてきた――その娘は高校の頃好きだった広崎ひかりに似ていて、自分は人間ではなく”爆弾”だと言う。その胸に埋め込まれた懐中時計はトキメキがあると針が進み、12時を指した時に関東全域を消滅させる規模で爆発するのだという。その自称”爆弾”ピカリちゃんが爆発するトキメキを貯めるためのデートをしながら長島は”広崎ひかり”との思い出を回想する。心臓が弱く発作を抑える薬としてニトログリセリンを服用していた。

「知ってる? ニトロって、甘いんだよ。……まださっきの味が残ってる」
「だから、今キスすると、きっと甘いよ」


あらすじだけだと設定がちょっと突飛(特にトキメキのあたりが)だと思うかもしれませんが実際に読んでみるとセツナイ系の雰囲気が漂っていて違和感がありません。他の短編も設定がなかなか新鮮で乙一(白)が好きな人に特にオススメ。


イラストの緋賀ゆかり氏も良いです。最初「フルハシが…フルハシが萌え絵……」と軽くショックを受けたのですが作品の雰囲気とも合ってるし、なによりキャラが生き生きとしているのでこの人選は素晴らしいかと。特に233Pのイラストにはやられました。