『容疑者 室井慎次』

★★★★★★★★☆☆

まさか「踊る」シリーズでここまで重厚にリーガルものをやるとわ。

ってのが率直な印象。つまりおちゃらけ部分が殆どなくてまともにリーガル・サスペンス。笑いところもなくてスリーアミーゴーズが作品内容から浮くくらい(笑) これはTVドラマじゃ人気獲れなかったろうなぁ。いや好きですよ?好きなんですが今までのファンの感想はどうだったんだろう、とちょっと気になったので。でも派手なのは「真下正義」でやった(らしい)し、シリーズの色をいろいろに出すという意味ではこれでいいのかも。室井さんに派手な笑いは似合わんしな。

というわけでリーガル・サスペンスなんですよ。本当は「法廷もの」と書きたいんですが日本の裁判システムでは盛り上がりに欠けるので……(演出として法廷シーンらしき演出はありましたけどね)。リーガル・サスペンスと言えばジョン・グリシャム。新人の弁護士がやり手から嫌がらせを受けて弁護士を辞めるか迫られて苦悩するあたりなんて王道ですよね。ちなみにジョン・グリシャムが描く若手弁護士の話では『レインメイカー』が個人的に一番好きです。映画も良い出来なのでオススメです。感動モノ。

(以下軽くネタバレかも)

話が逸れましたが新人弁護士の小原久美子田中麗奈)、意外と良い感じでした。黒の服装が多かったのも個人的にGood(笑。ただ警察嫌いのトラウマがちゃちぃ…つか○○○○ってこのシリーズで使い古されてるしさ……作品テーマに合わせて「親(警察官)が冤罪で投獄・獄死」で良かったと思うんだが。それだとベタすぎるかな。

そうそう、前にTV番組(Matthew's Best Hit TV)でマシュー(藤井隆)が真似していた「私は警察が嫌いです。死ぬほど嫌い!!」の物真似が印象に残りすぎていてつい笑ってしまいそうでしたよ(笑)

対してベテラン弁護士の灰島(八嶋智人)。いやぁ、マジむかつくわコイツ。…このシリーズ悪役でもこう生理的に受けつけないレベルで嫌いなのはいなかったんだけどなぁ。警察上層部はいつもむかつくけど。このシリーズはいつも”イヤな奴”を出して後の展開によって”良い奴”になるのでこいつも後々でマシになるのかなぁ……こいつの動機も久美子と同じ「警察嫌い」のほうが対存在で良かったと思うんだが…やっぱりベタか。

事件は…うーん、面白かったけどいまいち盛り上がりに欠けるかなぁ。このシリーズの特性としてもラストは結構しょぼく終わるので初見の人は特に肩透かしの感想が多いみたい。室井の過去の恋人の思い出を映像にして2ラインで攻めたほうが面白みが出たと思う(主軸が”事件”だと弱い印象。もっと室井という”人間”にスポットをあてたほうが良かった)。小道具である日記をスピンオフして出版するのも手法としては好きではあるんですが(実際私はその本を読んで映画を観たわけだし)。ちなみにこの本(http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/diary/)は映画の前に読んだほうが良いんじゃないかな。少なくとも私はそっちがオススメ。