伊坂幸太郎『魔王』(講談社)

★★★★★★★★★☆

伊坂幸太郎が描くファシズム

「え?」と思うような組み合わせですが、伊坂幸太郎流の”演説キャラ”に語られると俄然面白くなりますね。ちなみに作者は”ファシズム憲法などが出てきますが、それらはテーマではありません。かと言って、小道具や飾りでもありません。”と書いています。

安藤はある時その”力”に気づく――他人に自分の思った言葉を喋らせる、いわば”腹話術”のような力に。その頃、政治の世界では犬養という若手が注目を集めていた。ムッソリーニを彷彿とさせる犬養を観て安藤はファシズムへの怖れを感じ始める。

腹話術と政治、ファシズムがどう絡むのか余計わからなくなるようなあらすじですね(笑) この安藤が演説キャラというか思考キャラでして、やっぱり伊坂作品の”演説キャラ”はいいなぁ、と実感します。今回、政治がテーマということもあり日本国民に対しての分析というか皮肉めいた台詞が多くて面白かったです。伊坂作品”らしい”言葉でもありましたし。

それにしても初出が2004年12月と知って驚愕。たった今(総選挙後)書かれたものかと思いましたよ。それくらい今の時期に合ってます。

ただ、ちょっと読後感が物足りないと感じる人も多そうな気がします。少年誌的に言うと「俺たちの戦いはこれからだ!」な感じで。それこそ読者に対して「考えろ!」と言っているのだとは思うんですが、単純に”読み物”としてはそこが面はゆいかな。


ところでこの本、講談社のオンラインショップからサイン本を注文して、22日の昼頃に届いたわけなんですが、ダンボールに本を梱包することなく素入れでしてね。 匣も本よりだいぶ大きめなので匣の中でガタガタ揺れただろうなぁ……Amazon並の梱包をしろ、とは言いませんがせめてビニールに包むとか、梱包材に包むとかしましょうよ……せっかくのサイン本なのに……

あ、ちなみにサインと一緒に書かれていた言葉は"every dog has his day!"でした。