『マテリアルゴースト 4』(富士見ファンタジア文庫)

「死にたがり」少年とヒロインたちのほのぼの団欒トークが楽しい幽霊ストーリーも佳境、最終巻1つ手前。絶望的な出来事があったわけではないけれど積極的に生きる理由もないので「あー、地震でも起きて死なないかなぁ」というような主人公に共感できるなら「買い」なシリーズ。あと個性的なヒロインたち(てぃんくる絵)とのやりとりに萌えたい人。

さて前巻(3巻)で「え、作品の根幹なネタをもうここでケリつけちゃうのかよ!」と驚き、4巻はほのぼの日常パートにでも移行して(シリーズの)延命処置に走るのかと思っていたのでいい意味で裏切られました。まさかここで終わりに向けてスパートかけるとは。なんというか、シリーズを通してのメリハリが利いていて”シリーズ”として巻を追いかけるのがとても楽しいです。

今巻は(も?)新キャラ「後輩」ポジ少女・耀(あかる)が登場。帯の「第7のヒロイン登場」の文字を見て「……え、そんなにヒロインいたっけ?」と素に数えてしまったのは内緒。あとケイコさんもヒロインですよ?「新ヒロイン出て事件解決してフェードアウト」な感じなんだよなぁ。いや人間関係として残ってはいるんだけど次巻では影が薄い、みたいな。悪いと言いたいわけじゃなく「ハーレム」モノとはなんか違うよね、という感じ。

ストーリーは前巻でラスボス臭がしてたあの人が仲良しグループにスッと馴染んじゃって心を乱される主人公。ヒロイン・ユウが自分から離れていってしまったショックもあって仲間たちに不満をぶつけ逃げ出してしまう――と、今回は「事件」ではなく主人公周りの人間関係のお話。あたりちらす主人公は読んでいてイライラしますが、まあそれだけのネガネガな小説ではないことはここまで読んでいる読者ならわかっているので無問題。

にしても…短編集が4月発売なわけだけど今巻こそその短編集に含まれる過去話を知った上で読みたかったなぁ。ラノベってこのあたりかなり不親切。問題こそ人間関係が主眼の今巻の盛り上がりは絶対に違っただろうに……。


ネタバレ)途中まで「ユウが身を引くのにぽっと出の新キャラじゃ弱いんじゃないかなぁ(ストーリー的にも読者の心境的にも)…このポジションは鈴音じゃないのか…鈴音不憫な子ッ!」と思っていたのですが終盤の展開がわかるとさすがにあのポジションに鈴音は置けませんやね。耀はその境遇がわかってから格段に好きになったキャラなのですが如何せん他ヒロインに混ざると薄いなw にしても耀がフラれた瞬間、「やばい、この女は刺す!」と思ったらホントに「我が子へ」ENDでどうしようかと

余談)なんか先輩とのアイコンタクトな意思疎通っぷりが先輩こそ真ヒロインな感じなんですが。ギャルゲならばメインヒロイン(=パッケージ表紙)はユウだとして先輩は全員クリア後に選べる真シナリオに違いない。丸戸ヒロインな感じの(狭い例え)。……ラノベ業界も「たったひとつの正史」にこだわらずに複数シナリオ(もしくは「IF」短編集)を出版すればいいのに(妄言

マテリアルゴースト 4
葵 せきな著
富士見書房 (2007.1)
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