『僕たちのパラドクス Acacia2279 』(富士見ミステリー文庫)

第6回富士見ヤングミステリー大賞<大賞>受賞作。

……大賞?

ああ、富士ミス的な意味でいえばお前がナンバーワンだ!

……しくしく。

読み始めた瞬間から「♪」とか「〜」な語尾と、なんか初心者臭がする盛り上がらない文章から脳内アラートがビンビンだったのですが……あぁ(嘆息)。

未来から来たタイムパトロールの少女が、現代の少年に偶然時空犯罪者を殺すところを目撃されてしまう。少年が「歴史的に重要度が低い」ことから未来のコトなんかを適当に喋り、規定の5分間が過ぎたので「さー、未来に帰ろうかー」っていうところで無線が反応なし。どうも”この事件”に絡んでタイムパラドックスが起き自分の住む2279年は消滅してしまったらしい……はやく歴史を修正しなくては、ということで解決に向かう2人。

……まず。タイムパラドックス関連の説明を「詳しい話は省くけど」と言われた瞬間にモチベーションだだ下がりですよ。「世界が滅ぶ」という事態において呑気にデートしていたりする子たちに怒っちゃいけませんか。いけませんね。ヤクザがあんなんでいいんでしょうか。いいですか……なんというか、この「子供には十分であろうノリ」が歳とった私にはちょっと耐えられません……

それ以降のストーリーも、「前半のパーツがあればこう組み立てるよな〜」と素人が簡単に予想できる展開そのままからはみ出すこともなく(オチまで含めて)……。かと言ってキャラクターが立っているわけでもなく……(というか犯罪者とは言え銃殺して「ちょっと気分悪いけど」程度で済まし、死体を火炎放射器で焼くヒロインってどうなんだろう……不評ではなかろうか)

読み終わって作品を振り返ってみると、外の人から見た「あー、ジュブナイル小説ってこんな感じなんでしょ?」というイメージの枠通りの作品。大幅なマイナス点はないけれど明らかなプラス点も見当たらない。

僕たちのパラドクス
厚木 隼〔著〕
富士見書房 (2007.1)
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