『学校を出よう!』(電撃文庫)

新刊じゃない感想って久しぶりかも?

さて時代の寵児となった「ハルヒ」にも当然1巻というものはあるわけで。2003年、作者の谷川流は「ハルヒ」でスニーカー文庫で大賞を取りデビュー、かつ電撃文庫でも本作「学校を出よう!」で二冊同時デビューという異例の新人だったわけです。まぁ、2006年のブレイクを待つまでもなく当時から「ハルヒ」のほうが有名でしたが。

ですが当時玄人の間では「学校」のほうが評判が良かったような覚えがあります。当時私は「ハルヒ」は読んだのですがあまり気に入らなかったので敢えて「学校」までは手を出してはいませんでした。で、今更読みました!

本シリーズに対しては「2巻以降面白くなるから1巻は我慢して読め!」というオススメコメントが結構あったかと思うんですが、

あれ、1巻十分面白いヨ?

確かに「ストーリー」としては打ち切り感というか消化不良感が残るので微妙判定する人も多かったろうとは思いますが、私は地の文の面白さだけで戦えます。この回りくどい、斜に構えた、胡乱な会話が大好きです。朝の陽光を言うだけの文章に「レーリー散乱」とか無意味に難解用語混ぜてくるあたりもツボです。

あー、なんだよもー。こんな面白文章書けるんじゃん。「ハルヒ」なんかより断然こっちのほうが好みだったわ……読まなかったことを後悔。当時読んでれば「期待の新人」として胸躍っただろうに。(ちなみに「ハルヒ」。私は一応読み続けてはいたものの「消失」で初めて面白いと思ったクチ)


さてあらすじ。思春期の少年少女の一部、しかも数年間だけ発現する超能力。その能力を発現してしまった生徒のみを集め、隔離した学校。その学校に自らは異能を持たないが、事故死した「双子の妹の片方」が憑いているために通わなければいけない少年。能力者の影響で出現する怪物を退治する学生自治組織のリーダーにして変人の白衣野郎(と、その部下のゴスロリ黒髪クール)や「生きているほうの双子の妹」やらと学生生活を営んでいると生徒会長から直々の呼び出し。学内だけで発生するはずの「怪物騒ぎ」が学外の街でも起きており、学園の生徒が疑われているという。その調査のため住民感情を逆撫でしないであろう「能力者でない普通の生徒」たる主人公が選ばれたのだそうだ。かくして幽霊の妹と一緒に久々に普通の街を歩いているとなにやら不穏な少年が接触してきて――


割とバカイチっぽい設定ながら、作者がそれを鼻で笑ってる感はこの頃から既にあったのですね(笑) 異能力ネタなのにあまりバトル寄りにならず、論理的というか、言葉で攻めていく作風が好みです。人によっては回りくどすぎると感じるかもしれませんが(笑) ただ、メインのストーリーの筋のほうが微妙かなぁ。つまんなくはないんだけどアクセル踏んでるのにスピードが出ずにイライラ、あれ、もう100円切れちゃった?なゴーカート気分。

ただ、前述のように地の文と会話のノリがすこぶる好み。個人的趣味ですがココが面白いとポイント高い。SF要素というか世界観の設定もちゃんと練られているし説得力もある。なんというか全体的に話にちゃんと”厚み”があって楽しめる。

好きなキャラ。黒ゴスロリと言うと思うてか! 実は今巻に限って言えばエロ寮長兼書記がいい感じです。精神感応で心を読んでからかいつつ自分の心を読ませたり、主人公の意識を操って自分のスカートの中に手をはわさせたり、かと思うと素直に謝ったり。あけすけな会話も楽しく”淫乱”というアレな特性の反面かなり好印象なキャラです。

ちなみに勿論黒ゴスロリも好きです。でも挿絵がなんか違うなぁ。文章ではクール見下し系な感じなのにイラストはかなりフェミニンなやわらかさがあって微妙……斯様にイラストは総じて可もなく不可もなく。むしろやや昔風の絵なので絵で新規読者を捕まえることは出来なそうだなぁ…勿体無い。

むー、「我慢して読め」と言われた1巻でこれだと2巻以降が楽しみだなぁ。

学校を出よう!
谷川 流著
メディアワークス (2003.6)
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