『薔薇色にチェリースカ』(集英社スーパーダッシュ文庫)

フィギュアスケートを舞台にした名作『銀盤カレイドスコープ』の作者・海原零の新作は欧州の貴族学園を舞台に凡庸な日本人が学園長の犬となって生徒会に挑む学園闘争モノ。

うーん……微妙。『銀盤』で一番評価しているのはフィギュアスケートの知識なんて皆無でも演技のビジュアルが浮かぶような筆力だったのですが今回の決闘(フェンシング)にはそれほどの力は感じられず。『銀盤』の主人公、芯をしっかり持ってブレることのない誇り高き王者タズサに比べると今回の主人公は決闘において正々堂々勝負するわけでもなく、賢さで罠を張るわけでもなくただただ凡庸に”卑怯”で魅力的には感じられないなぁ。

ストーリーとしてもほぼ鎖国状態の西洋の国の、貴族の子女が集まる学園で、2人しかいない日本人の少年少女が生徒会を侮辱しただけで生徒会と殺し殺されすら厭わない決闘へ――っていうのがどうも現実的な感覚から乖離しすぎてて感情移入しにくいなぁ。

今回はまず1巻ということで表紙のおねーさんは今後話の主軸になるんでしょうが、今回はほぼ空気。別にいいけど1巻の完成度としてはひどくマイナス点だなぁ。仮にもピンで表紙張ってるわけですし。

イラスト。漫画家の人か。モノクロは表情がシャープで結構好みなんだけれどカラーのほうは絵が止まっているというか動きが感じられなくてちょっと微妙かな。でもあとがきを読む限り筆が早い感じなのでラノベ絵師にとってはそれが最重要かも(笑)

薔薇色にチェリースカ (集英社スーパーダッシュ文庫)

薔薇色にチェリースカ (集英社スーパーダッシュ文庫)