『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』(電撃文庫)

これは良い。 やっぱり電撃は賞持ちより「最終選考落ち」のほうが面白(ry

さて、”青空の下、制服の少女が荷物を詰め込んだスーパーカブに乗っている”というなんかストレートど真ん中にくる表紙、なんかせつなげな感じのタイトル、と思わず手にとってしまう本作。

名前、そして存在が喪われてしまう<喪失病>が蔓延する世界。まともなライフラインが動かなくなった世界で少年と少女はスーパーカブに乗って旅を続ける。「世界の果て」を目指して――

旅の途中で色々な人に出会い、その人の思い出を聞いたり、一緒に夢を叶えたりしながら、それでもその人はもうすぐ存在が消えてしまう人だったり、少年と少女の目の前で消えてしまったり、という短編連作のようなストーリー。

「存在が消える」というやや大風呂敷な設定ながら、その設定自体は世界観に”終わり”を感じさせるセツナサや、登場人物たちがちょっと思い切った行動をするための理由づけのアクセントで抑えているのが良い感じ。基本は「相棒以上恋人未満」な少年と少女の旅モノです。

全体が優しく、楽しい、でもちょっとせつない旅物語。結構オススメ。特に割と考えなしに行動する元気少女がアクティブにコメディってくれるので行動やリアクションが漫画的に浮かんで非常に面白いです。このあたり、少年と少女のやりとりが面白かったのでこの人は他のシリーズになっても結構ちゃんとやっていけそうな感じですね。とりあえずこのシリーズの続刊を希望しますが!

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)