『桜田家のヒミツ〜お父さんは下っぱ戦闘員〜』(電撃文庫)

最終選考落ち。帯にも「最終選考会で賛否両論」とありますが、私は好みじゃないなー。

下っぱ戦闘員といえば『仮面ライダーになりたかった戦闘員』が真っ先に浮かびますが、まぁ表紙絵からすると『世界平和は一家団欒のあとに』風なのかなー、と。どっちにしても名作すぎるので期待は高かったのですが…うーん。

下っぱ戦闘員・桜田源之助42歳は今日も警察の5人戦隊に仲間の怪人を爆殺され、自分は倒される日々。ある日組織は裕福な家の明晰な頭脳を持つ少女を誘拐するが、お転婆で手がつけられないと保育科から匙を投げられ、桜田家で引き取ることに。昔気質で”昭和の父親”な源之助、元いいとこの娘さんでお人よしな妻、ちょっと捻くれている息子、その3人家族に孤独な少女は心を開き始め――。

この父親がなー……。昔気質で頑固、無知でデリカシーがない”昭和の父親”というところまではいいんですが、それはポーズで実質は小心者、バレなきゃ自分のミスを隠しちゃおうという人でまったく尊敬できない人。一応地の文にもそう書かれているから描写はうまいんだろうけど、家族モノの一家の大黒柱としての人物が尊敬できないのはなー。つい先日『東京バンドワゴン』で堀田勘一の”かっこいい頑固爺”っぷりを読んだばかりなので本作の源之助が小者すぎて霞む霞む。

まぁ、それでも裕福だが両親とも忙しく家族愛に恵まれなかった少女が、貧乏だが暖かい家族の一員となって素直になっていく、という王道の部分は王道だけあってなかなか。ただ、「父親が下っぱ戦闘員」であることが最初の導入だけで後半の展開や、父親のプライドにまったく生かされていないのが残念。

文章は10年も書き続けただけあってなかなかしっかりした文章。ただ、地の文で書いた文節を直後の会話文でも繰り返す癖はうざいなーと思ったので改善して欲しいけど。ラノベにしてはやや難しめ?の単語も散見されて漢字も多め。ただ、それも含めやや文章が古い印象なので読者受けはどうかなー。イラストも文章もまったく萌えがない珍しい萌え度0%の境地(※)に至っているけどどうなんだろ。売れるのかな?


※イラストのない『神栖麗奈』も文章内には萌えがあるし、女性の出ない『H2O』も男の萌えがあると思ふ。

桜田家のヒミツ―お父さんは下っぱ戦闘員 (電撃文庫)

桜田家のヒミツ―お父さんは下っぱ戦闘員 (電撃文庫)