『あんでっど★ばにすた!』(電撃文庫)

うーん。イマイチのめりこめなかったなー。

所謂”魔法がちょっとだけ使える人がいる現代”の学園日常モノ(あまり学園にいなかったけど)なのだけれど、魔法と魔法関連の機関、道具の説明に終始していて肝心のドラマの部分が薄い。魔法知識といい、過去のエピソードといい「主人公はわかってるっぽいのに読者に明かされない知識」が多くてストレスフル。後から明かされるならいいけど結局この巻じゃよくわからないし。

ストーリーは人の良さそうな少年と、幼なじみな暴力お嬢様を主軸に、宝石泥棒の探索を依頼する外国少女が鞘当て。その途中で全てを知っているかのような老獪な少女エヴァンジェリンと侍女茶々丸に出会う、という感じ。

そのカタコトな外国少女が今巻のメインなのだけれど……うーむ。初対面からあまり時と友情を重ねることなくストーリーが佳境に入るので結局「他人」のまま、本来あるべきカタルシスが読者に伝わってこない。カタコトも日本語文法はちゃんとしてて所々カタカナ表記という、現実的なカタコトでなく単に読みにくくしただけな感じ。


余談)キャラ紹介を見てからずっと気になってるんですが女の子の名前にリンガリンガってどうよ。リンガ=サンスクリット語で”男根”。インド神話シヴァ神の男根を模した像が有名(3×3EYES、インディ・ジョーンズなど)。調べたところニュージーランド先住民マオリ族の言葉で「リンガリンガ=手」という意味もあるらしいですがさてはて。


そういえば『吸血鬼のおしごと』で素晴らしい”反転”を見せて多くの読者がトラウマになったくれた作者に期待するものと言ったら当然黒化なわけですが、その意味であとがきに笑った。

いけませんね。もっと純粋に死体のお話を書かなければ。次があればそうしてみようと思います。最終的には全員死体に。

がんばれ鈴木鈴。とはいえこの巻には鬱グロはないですけど。

あんでっど★ばにすた!
鈴木 鈴〔著〕
メディアワークス (2007.1)
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