『パーフェクト・ワールド Book.2 Two to Tango』(講談社BOX)

西尾に比べて読者が少ない気がする、もうひとつの大河ノベル(実際入荷数が3倍差でこっそり泣いた)。ぶっちゃけこっちのほうがお金を払って手元に置く価値があると思います。

清涼院流水という天才の圧倒的才能の前にひれ伏すしかない。12巻続いたらホント大変なことになるぜ。”今回のシリーズを読めば「英語」が喋れるようになり、「京都」に詳しくなれる”との言は本当だと確信しております。

さて、清涼院流水という作家から説明したほうがいいんでしょうか。天才。以上。とはあんまりですが、まず「小説」ではありません。「小説の皮を被った何か」です。今回で言えば小説の皮を被った「英語の学習書」「京都観光MAP」です。ならそれぞれ英語の参考書でも読めば、という感じですがそうではありません。清涼院流水という天才が自ら編み出した」学習法、観光法というのがポイント。いや、ほんとその情報収集力とその情報を加工する発想力は本当に人間かと疑ってしまいます。

清涼院流水」の本は読んだことはなくても少しラノベ・ミステリを齧っていくとその名前はすぐに出てきます。主に、地雷として。だが敢えて言おう!地雷ではなく核爆弾だと! 大体7割の人が投げますが、ツボれば最強。ミステリ読みとして把握しておくのは『コズミック』『ジョーカー』の2作品(JDCシリーズ)で十分という雰囲気かと思うんですが、この程度で清涼院を把握したつもりとはおこがましいにも程がありますな! 清涼院の本領は小説ではなく、本作のような「小説の皮を被った学習書」です(いや、JDCも好きですが)。過去に小説の皮を被ったリアルタイムな「ニュース」であった『トップランド』が出てるので才能に打ち震えればいいと思う。


さて前置きが長くなりましたが(というかそれくらい清涼院読者は少ないだろうという不安がある)、本作。小説部分は本文の1割くらいしかないので添え物の印象だけれど、残り5割の「英語」の部分が素晴らしい。1巻では英語参考書のコラムコーナーのようなトリビアかと思いましたが、2巻にきてかなり本格的に(特に日本人が苦手な”発音”の学習がメイン)。この学習法が「正しい」のかは知りませんが、流水教信者な私はついていきますw 1ヶ月の学習ノルマもほどほどであり、進研ゼミみたいな感じ(とは言え小説大説なのでノルマに従う必要はないと思いますが)。

残り4割は京都観光。観光MAPではなく、手書きの地図が挿絵となっており、それが重要なポイント、通りだけを把握しているのでかなりわかりやすい。白黒ですが写真もあるし、本文中で拝観料や、駐車場の料金、車で移動できるか、人混みはどうか、実際に1日で回るのは時間的に辛いなど地元民でも全部知っていることができるかと思える情報が詰め込まれていて観光MAPの何倍も役に立ちそうです。この本の情報を元に京都観光に行きたくなりましたw

”添え物”と言ってしまいましたが、別にどうでもいいわけではありません小説部分。ただどうしても割合が少ないので……。いわくありげな謎の登場、その探索、予想外の早期解決という流れはテンポが良くて小気味良いです。なにより「ニシオ」「カタナガタリ」という言葉すら作中の”謎”となっていますので2作品を読んでいると(・∀・)ニヤニヤできます。「12ヶ月連続刊行」というリアルタイム性を作中に盛り込んでエンターテイメントにする技が上手いです。


……と私は全力で気に入ってるしオススメしたいんですが……現実問題として人は物凄く選ぶんですよね。「小説じゃねーよwww」って言われたらその通りだし。信者意見ですらベストセラーにはなりえないと思うんですよ…個人的には歴史的名作だと思う『トップランド』も打ち切りだったし……というわけでオススメしようという意思全開で書いてみましたので興味を持ってみましたら『刀語』とセットでこちらも読んでみてくださいませw