『ラビオリ・ウエスタン』(ファミ通文庫)

 だから目一杯、やろうと思った。自分が信じる確固たる文学を書こうと思った。
 これがこの「ラビオリ・ウエスタン」を書こうと決めた経緯だ。
 なんて下らない文学! と思われるだろうけども。それに、今までボクの本を読んできた人は首を傾げる内容かもしれないけれども。たぶんこの本は、今のボクにはこれ以上は書けないっていうくらいの、完璧なボクだけの、言ってみれば「森橋文学」になっていると思うのだ。ご大層な言い方で恥ずかしいけれど、まあ、こういうのを自分で言ってみたい時もある。人が言ってくれないから。

とまぁ、これはあとがきの文章なんだけども、実際このように思ったのでなんだ作者もわかってるじゃんとか思ったんである(この言葉遣い、主人公の女子高生の話し方なのだけれど、作者の日記もこの言葉遣いなので微妙に気持ち悪かったんである)。

うーん。あとがきで「これが売れなかったら作家引退」みたいなことを言っていて『三月、七日』がその年(2004年)のベストと言うくらいお気に入りな自分としてそれはとてもとても困るのだけれど実際この『ラビオリ・ウエスタン』は気に食わなかったのでそう言うしかない。

おバカな女子高生が文法めちゃくちゃな地の文で心情を描けばブンガクかよ。重要っぽいキャラクターが唐突に死んじゃえばブンガクかよ。女子高生が行きずりに初体験をすればブンガクかよ。エトセトラエトセトラ。

序盤は少女が借金を背負わされて、自由奔放・最強な殺し屋ラビオリの弟子として殺し屋稼業!みたいなラノベ的な展開でそこそこ面白かったのに(狂ってる文法にイライラしたけど)、後半最近の文学の最低な部分だけ真似したほうになってゴゥ・トゥ・ウォール。

なんだかなー。舞城王太郎桜庭一樹を混ぜて、でも結局どちらにも届いてない粗悪品みたいなイライラ感。この作者は(1作だけとは言え)かなり気に入った作品を書いていて、それがあるから今までの出版物は全部追ってきているのだけれど、だからこそイライラ。新人がマイジョー・フォロアーなら諦めもつくのだけれど。

イラスト、ぶっちゃけ合わないと思うし新規読者逃がしてると思う。作者が友人のイラストレーターとデザイナーと組んでやりたくてやったんだと言われればまあ、読者としては納得するしかないんだけど。

ラビオリ・ウエスタン
森橋 ビンゴ著
エンターブレイン (2007.3)
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