『ヒツギでSOSO!』(ファミ通文庫)

ヒツギでSOSO! (ファミ通文庫)

ヒツギでSOSO! (ファミ通文庫)

うほっ、いい新人! たまにこういう”発掘”があるからファミ通文庫って好きw

表紙から元気で楽しげな雰囲気が伝わってくる本作、帯によると「えんため選考会を激震させた問題作ついに解禁!!」だそうですが…

911テロ以降アメリカはテロリストの厳罰化・死刑を推進。さらには行き過ぎて公開処刑”を推奨。世界的には死刑廃止に動くなか孤立した米国、当然日本にもそういった圧力はかかってくるわけで……今や死刑執行人は高給と安定、社会的地位を得た花形職業。そんな死刑執行人を目指すための学園もできるわけで……少年少女が死刑執行人の赤い制服を目指す中、かたくなに黒い制服を着、死刑の模様に眉をひそめる少年・比津木奏輔(ひつぎ・そうすけ)、彼はその裏方職業・葬儀屋を目指す少年で――

ある日、同じ学生でありながら既に処刑人の免許を持ち、アイドル視されているエリート美少女・茨伊姫璃子(いばらき・きりこ)が世界的テロリスト・アランド=サーレスを、テロによって心に傷を負った者に宿る力・PTSDという異能により公開処刑。執行後、アランドの葬儀を担当する予定だった奏輔だったがアランドの遺体を強奪するテロリストに幼なじみの条禅穂風里(じょうぜん・ほふり)と共に誘拐されてしまう。

強奪・誘拐したのはアランドに拾われたという13歳の娘・アリカ=サーレスと20人足らずのテロリスト。このような状況であっても個人のためにエンバーミング処置をし、故人の宗教に沿った葬儀をしようと国籍不明のアランドの宗教を知ろうと聞き込みをする奏輔と穂風里。そんな2人に心を開いていくアリカ。そんな誘拐という状況下でも安穏とし始めた時、アジトを警察が強襲して――


ファースト・シーンが未成年の学生に絞首刑を執行させる”実習”とかもうね、そりゃ激震するわw ちなみに上のあらすじ、本当は911テロとか国名とかの固有名詞は微妙に書き換えられてます。この序盤からはいろんな方向に話が転がっていけそうですごいわくわく。予想できねぇ。実際進んだ方向は予想(期待)とちょっと違いましたがこれはこれで。

通夜と告別式の違いとか、葬儀の流れとか意味とか、知らない事を知れる意味でも面白かったですし、少年少女が読む物語としてもちゃんとした筋が通っていて良作(本当に子供に読ませていいのかまでは責任持てませんが)。

現在は改心したからといって過去に人を殺した人は処罰されるべきか否か。テロリストは問答無用で死刑にすべきか。どんなことがあろうとも「人を殺しちゃいけません(えーんじぇるらび(ry」なんておためごかしを主張するのではなく、どっちの主張もちゃんと描くバランスが好きです。なので○○○さんを悪役だとは思わないです、私。

登場人物は死ぬしテーマは重いけど、根本は表紙から受けるイメージそのまま。こういう風に重いテーマをエンターテイメントに落とし込むことができるからライトノベルは面白いなぁ、と思います。

うむ、良作。そして応援したい。