『カッティング ~Case of Mio~』(HJ文庫)

趣味ど真ん中。

リストカットの痕を”隠さない”という異質な美少女と他人との乖離感に悩む少年。他者を排斥し物静かに読書を続ける彼女に「ぼく」は惹かれ、衝動的に告白してしまう。

「言って置くが、僕はアクセサリーが欲しいわけじゃない」
「でしょうね」
 アクセサリーとしては、私はとてもちぐはぐしているでしょうから、と囁くように付け足した。
「けど、あなたの付き合うという概念は、いったいどんなものなのかしら?」
「一緒に居る、ということだ。なんだったら手を繋いで映画館に行ってもいいが、どちらかと言えば君がニーチェを読んでる横で、僕は静かにヘミングウェイでも読んでいる。そんな空間がつくれたらいいね」
「欲がないのね。私を押し倒したいのじゃなくて?」
「欲情してないかと言われたら、それは否定できないね。僕も男だから。けどそんなことをして君に嫌われたら、多分僕は首を吊るんじゃないかな」
「オーバーね」
 彼女はそう言うと本にしおりを挟んで鞄にしまい、右手に鞄を持って立ち上がった。
「いいわ、付き合いましょう」
「いいのか?」
「断る理由もないから」
 ミオは左手で顔に掛かった髪を払った。その手首には深く澱んだ赤色が、夕陽よりも鮮やかに滲んでいた。
 僕とミオは、こうして付き合うことになった。(P12)

乙一『GOTH』の「ぼく」と森野夜の関係を思い出すね。そしてこのクーデレがデートの待ち合わせに早く来過ぎたり、世を斜に見たスカした少年も少年で緊張でドジってからかわれて、もうなんて言うかニヤニヤですなニヤニヤ。

中心の話はこの先から転がっていくんですが知らないほうが楽しめそうなので自重。あらすじに書いてるけどな! 先に読んじゃって絶望したぜ!

「なんで他の人は普通に笑ったり、他人とつきあっていけるんだろう」と実に中二病らしい主人公。大好きだ中二病。本作は気取ってる感じの中二病ではなく、素朴な感じので中二病(謎表現)なので嫌悪感も薄いし、ちゃんと経験を積み重ねた上で結論を出すので割と受け入れやすいかも。

まあキャラがストライクなのでその他は瑣末な問題ですがね!

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)