『時載りリンネ!』(角川スニーカー文庫)

これは面白い。第11回スニーカー大賞《奨励賞》としては『操り世界のエトランジェ』のほうがPUSHされてるように見受けられましたが個人的にはこの『時載りリンネ!』のほうが面白い。

「比べてどうだ」とかあんまり言いたくないんですが正直な話自分も表紙をみて「あー、とりあえず読むのは『操り世界』だな。『時載り』はなんか…”良い話だけどそれだけ”な薄味な作品の予感がする…」と完全に勝手なことを思っていたわけです。

それがあーた。確かに予想通り「子供たちの冒険」といったていのファンタジックなお話。ただ、そのフィクションの設定が魅力的で、文章もユニークなセンスがあって味わい深い。

人とは違い本を読むことが栄養を得る手段である「時載り」。さらにその力で時を止める異能を持つ。そんな「時載り」の少女と幼なじみの少年。天真爛漫な少女の「冒険したい!」という期待に巻き込まれた少年は謎の書物を拾ってしまい――

「わくわくする大冒険がしてみたいな。物語みたいな。悪党に狙われて困っている女の子を颯爽と救うような話が理想ね。日常の中のふとしたできごとから幕を開けて、しだいに謎が膨らんでいく不思議な展開、中盤はミステリーあり、活劇あり、友情ありの総天然色の大冒険よ。お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて、もちろん最後は奇麗な大団円を迎えるの。すべてが終わったあと、前よりも少しだけ世界が輝いて見えたら素敵よね!」(P8)

この作品を象徴する名台詞。読後感が爽やかで安心して読める感じ。割と広くオススメです。あ、あと眼鏡っこ属性のある人は121Pの挿絵を見てノックアウトされるといいよw

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)