『円環少女6』(角川スニーカー文庫)P334

「俺は、たぶん、子どもがあたりまえに成長しておとなになる、あたりまえのことが現実になってほしいんだ。そんなことのために、誰かが苦しい思いをしなきゃいけないなら、そばにいるおとなが踏みとどまってやるべきじゃないか? メイゼルはしあわせになっていいはずだ」
 仁は、血が凝り固まったような重いものを、吐き出してしまうと清々しい心持ちになっていた。
「俺は舞花とアパートにいたころ、そんなおとながいてほしかったんだ。だから、そういうおとなになるんだ。ダメかな?」
<そんなおとなは、おとぎ話の中にしかいないのよ! おとなを、そんな重たいものにしないで>