『ラストビジョン』(電撃文庫)

2001年10月発売。今でもコアなラノベ読みの中ではちょいちょいと名前が出てくる作品。タイムスリップネタの青春ストーリー。描写が淡々としてる上にSFにも青春にもどっちにも寄り付かない感じで全体的に弱い感じ。ただそれでも某人物の名前の由来(正確には違うけど)がわかった時は背中がゾクゾクしましたぜ。

謎の、そして無口な転校生・お嬢様な深奈に誘われて彼女の財閥の研究機関がある孤島へ向かった3人の少年少女。そこでは”素体”と呼ばれるロボットに”意識”を芽生えさせる実験を行っていた(なんでも10年前に一度”意識”が芽生えたようなのだが…!?)。

しかし島についても深奈とは会えない。その夜、研究所が炎に包まれ、動かないはずの”素体”が深奈を拉致してどこかへと消えた。同時にみつかる所長の死体――

前半からだと「あれ、たしかこれタイムスリップって聞いたんだけど…別の作品だったっけ?」と首をかしげてしまいますが確かにタイムスリップしていきます。若干唐突な気もするけど…。まあ、最後はうまくまとまるのでオールオッケー。

欲を言えば「女の子のためにがんばる」っていうわりにはなんでその子のためにがんばるのか(好きなのか)という描写が薄いのでもうちょっと掘り下げて欲しかったな。他のキャラも良い人で楽しいんだけどどこか人間味が薄い感じ。まあドロドロされるのもこの作風に合わないのでそれはそれで好きなんだけど。台詞回しが結構面白いし。

イラストはヤスダスズヒト。今ほど洗練されてないけどその目だけでちゃんと作者がわかるってのがすごいやね。

ラスト・ビジョン (電撃文庫)

ラスト・ビジョン (電撃文庫)