『Xトーク』(電撃文庫)

KOEEEEEEEEEE!!!!!

いわゆる「百物語をしましょう」から始まる”怖い話”の短編集。いやはや、ちゃんと怖いし、オリジナリティがあります。読んでいてゾクゾクと「来るぞ、来るぞ」と思っていて次をめくるとイラストだというのが透けて見えるときなんて「どんな怖い絵が飛び込んでくるんだろう」とビクビクしっぱなし。まだ緒方絵だからそんな怖くないだろうし、狙った怖い絵はなかったので精神的には良かったですが…

”腐らない恋人の死体”と共に生活する不思議な青年に惹かれていくコンビニの店員。彼は彼女は眠っているだけだと言い張る。時が立ち、青年と心を通わせた頃部屋にある彼女の顔がこちらを向いたような気がして――『クックロビンの埋葬』

”顔を剥ぎ取る”という都市伝説の怪物「首刈り」。首刈りに襲われた夢を見た少年が汗みずくで飛び起きると鏡には首を斬られた自分の胴体しか映っていなかった。しかし周囲は自分の顔が見えているようだ…顔の感覚がなく、鏡には首の切断面が見える生活に気性は荒くなり、恋人は離れていく。一方夢の中では少年は生首だけになり、「首刈り」の家で他の犠牲者たちと「首刈り」に怯え続ける――『ヘッドハンティング

この2編が秀逸かな。他、『子供たちの町』『七不思議の向こうで』。それにしても怖い話というのは自分が怖がっているというのが如実にわかるので作者の巧さがよくわかるような気がしますな。作者、『哀しみキメラ』は地味な良作といった趣でしたが、その後の『ロミオの災難』、そして本作とアイディアをどんどん出していて、かつ文章も巧くなっていっているので今後にますますの期待。

そういえばラノベでホラーといえば『Missing』『断章のグリム』だけど、あれはちゃんと”主役”がいて、まあ主人公は比較的安全だろうという安心があるから、本作のように純粋に「怖い話」って新鮮だなぁ。小学校に置いてある「学校の怪談」シリーズ(だっけ?)以来ひさびさにこういうタイプの物語に触れたかも。

個人的に上半期ラノサイ杯新シリーズ部門にノミネート確定。オススメ。

X(クロス)トーク (電撃文庫)

X(クロス)トーク (電撃文庫)