『きみとぼくが壊した世界』(講談社ノベルス)

様刻くんはそれなりに読書家であり、また一時期、かなり深いレベルで推理小説に傾倒していたらしいのだが、どこかではぐれてしまったらしい。蛇足となりかねない注釈をしておくと『はぐれてしまった』というのは、まあ、柔らかい表現である。好きだったジャンルの小説を読まなくなったとき、好きだった作家の本を読まなくなったとき、『飽きた』とか『卒業した』とか言ってしまっては、それは今まで好きだったジャンルや作家、それに何より過去の自分を否定することになってしまう――そんなジレンマを解消してくれるのが、『はぐれた』というこの言葉である。『推理小説からはぐれてしまった』、『あの作家は五作目以降はぐれてしまった』。しょうがない、はぐれてしまったのだから。ジャンルにも作家にも、勿論読者本人にも責任はない。(P20)

この言葉は流行る(俺の中で)。あれですよ、ラノベに飽きたわけじゃないんですよ、ちょっとはぐれかけてるだけなんですよ。

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)