『さよならピアノソナタ』(電撃文庫)

作者のイメージからすると(2chねら、ニート)信じられないくらい綺麗な青春モノで吃驚。

突然失踪したはずの天才美少女ピアニストに、せっかく居心地良くした空き教室を奪われてしまった主人公は彼女を見返すためにベースを手に取り……というようなストーリーライン。かなり青春小説のフォーマットで王道すぎるんだけど植田亮の透明感のある絵も手伝ってなかなか好印象。

ヒロインのツンデレラ(お姫様というあだ名からしてこれしか浮かばなかったw)も結構良いんですが、何より音楽批評家の主人公の父親が良い味出してる。妻に逃げられたダメダメ人間ですがだがそれが良い。

「うるさい」
 ぼくはコップの水を哲朗の顔にぶっかけた。
「なにするんだよ……ナオ最近冷たくない? ひょっとしておれのこときらい?」
 なに言い出すんだこの気持ち悪い酔っ払いは。あんだけ吐いて、まだ酒が抜けないのか。
「あのさ、哲朗」
「うむ」
「消費税ってきらい?」
「なんですかねいきなり」
「いいから」
「まあ、好きかきらいかっつうと、ない方がいいんだからきらいかもしれんが、なんせつきあい始めてずいぶんたつし、いやだって思ってたのも忘れちまったかなあ」
「うん、だからそんな感じ」
「……泣いてもいい?」
「外で泣け」(P148)

音楽関連の単語、曲名がよく出てくるので音楽好きは楽しめるかも。逆に全く聴かない俺のような人にはちんぷんかんぷんでかなりおいてけぼり。

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)