『幻想症候群』(一迅社文庫)
西村悠、あとがきで言うからどんだけ出してなかったんだっけ、と思ったら前作からたった1年4ヶ月じゃないですか。甘い甘い。
というわけで『二四〇九階の彼女』(電撃文庫)の西村悠が一迅社文庫で新作。『二四〇九』はぶっちゃけキノ旅というか、絶賛する出来ではないんだけど1エピソードや1文節で「お」と読ませてくれるので期待してたのですよねー。なんていうか、一迅社は「才能はありそうなのに売れなかった」人をうまくレスキューしてくれてる気がして好きです。この西村悠といい、『トキオカシ』の2巻打ち切りは今だに富士ミス最大レベルの愚行だと主張したい萩原麻里といい。ちなみに来月は『殺×愛』の風見周だって。
さて。少年少女の”幻想”が”現実”となって世界を侵食するので殺されちゃいまーす。…直前に田中ロミオの『AURA』読んだせいで厨二設定を素直に受け入れられなくなっていて困った。実は『AURA』って読んじゃいけない禁書だったんじゃ……
まあ、それはさておき、そんな割合目新しくもない設定の短編連作。天然ピュア系の幼女とくらげ(幻想)と青年の交流を描いた『遥か遠くの海』はとってもKEYな感じ。ヒトデ祭りならぬクラゲ祭りですっ><。
ホラー気味な『無限回帰エンドロール』。黒乙一っぽい(『SEVENS ROOM』)。それよりなにより”アレ”は苦手な人も多いのでせめてイラストは勘弁してください。マジに。あとラストがエグすぎる。『遥か遠くの海』もだけど「そう終わると思ったところで……こう来るぜ!」みたいな作者の悪意(というか王道に対する反抗心)を感じる……王道から外せばいいってもんじゃないんだぜ?
『夏休みの終わり』。えちぃ。……Σ!? あれ、一迅社エロ禁止なんじゃ…!?(一迅社文庫はキスより先のエロが禁止らしい) あれですかね。わかつきひかる的なポルノは禁止で、死に向かう少年と一途な少女が泣きながら肌を合わせるのはセーフなんですかね? その後『さくらファミリア!』(杉井光)を読んで、もう「一迅社=エロ禁止」は撤回されたと見るべきな気がしてきた(笑)
『一〇〇〇年の森』。今度は白乙一(『陽だまりの詩』)ですか。まあ、他の作品と本当にそんな似てるか?って冷静に言われると「そうじゃないかも?」って感じなのですが、まあ最初に読んだ印象っていうことで。
全体として悪くないんだけど、まとまりがやや悪いのと、よくある展開・設定からは大きく抜け出せていないのは以前と変わらないかなー。もう少し、何かあれば大きく化けそうな気配は感じるんだけど。
- 作者: 西村悠,鍋島テツヒロ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/07/19
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 37回
- この商品を含むブログ (29件) を見る