『神様のメモ帳』(電撃文庫)

さあぶっちゃけ今月一番の期待作です!悪い意味で!「ニート探偵」「ニートティーン・ストーリー」――これほどあらすじで興奮した(悪い意味で)作品があったでしょうか反語。ましては『火目の巫女』のあとがきに縦読みを仕込んだ2chコテハンなら尚更のこと。

真実はきみの平穏を破壊する可能性がある。それでも知りたいかい?

「ただの探偵じゃない。ニート探偵だ。世界を検索し死者の言葉を見つけ出す」
 路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる《ニート探偵》アリスはそう言った。
 高校一年の冬にナルミと同級生の彩夏を巻き込んだ怪事件、都市を蝕む凶悪ドラッグ《エンジェル・フィックス》――すべての謎は、部屋にひきこもる少女探偵アリスの手によって解体されていく。そして事件解決へ向け、普段は不真面目なニートたちが動き出す!
 第12回電撃小説大賞<銀賞>受賞者が贈る、情けなくて可笑しくて、ほんの少し切ない青春を描くニートティーン・ストーリー登場!


…………あれ、面白いぞ?

……まあ待て俺。寝てない頭で脳がラリってるだけだ。落ち着いてよく考えろ。と、一瞬考え込みましたがやはり面白かった気がします。「俺達ニート!」と声高に堂々としている物珍しさが手伝っていることは否定しませんが、それを差し引いても「”ひきこもりがちな少年”が少し年上のコミュニティの人達と触れあい少しだけ前向きになる」ストーリーとして面白く読めました。そのお兄さんたち(ラーメン屋に集まるニートたち。パチプロと軍オタとヒモとヤクザ)も好感が持てますし、ラーメン屋のお姉さんもいいし、ラーメン屋の上のビルに引き籠もってる探偵少女・アリスもいいです。ひきこもりで横暴で口が達者で毒舌。黒髪ロングなヴィクトリカを想像するとわかりやすいと思われますw

ミステリー部分は街に氾濫する新手のドラッグに関して身近な人が関与してるかもしれない云々という感じ。んー、斬新ではないけれどそれほどベタでもない微妙なところでしょうか。先を読める人は読めるだろうけど割と退屈せずに読めました。清々しい話ではなくちょっと痛鬱いので100%ハッピーエンド主義者には向かず。

「社会不適合者な安楽椅子探偵」と「普段飄々としてる遊び人だと思っていたのに実は有能な部下」というよくある構図に対して「ニート」という注目度の高い単語を噛ませただけと見ることも可能かもしれませんが、ニートをネタにしたトークがなかなか面白かったのでどうでもいいですかね(山手線ゲームのお題:『ハローワークによく置いてある冊子』には爆笑)。正直ニート探偵アリスよりもその助手的な役割を果たすニート3人(元ワル、ヒモ、軍オタ)の無職野郎Nチームが素敵すぎて笑えます。プライドを持ったニートというか輝いてるニートというか。反面ネガティブな要素がなく一瞬ニートに憧れそうになってしまいます。まあそれはそれで逆に心理的にお優しい。

うーむ。からかい半分どころか8割くらいドクペを飲む心境だったのですが意外な当たりを引き当てたかな。ニートの人、ニートになりそうな人ニートをネタとして楽しめる人にオススメ。迷ってるなら「買い」。大体40Pあたりまでパラパラ読んでいただければ雰囲気を掴むのに必要十分かと。

神様のメモ帳
神様のメモ帳
posted with 簡単リンクくん at 2007. 1.15
杉井 光〔著〕
メディアワークス (2007.1)
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