『死図眼のイタカ』(一迅社文庫)

あかん千紗都! それは恋愛フラグやない! 死亡フラグや!

というわけで『さよならピアノソナタ』『神様のメモ帳』の杉井光の新作はデビュー作『火目の巫女』の鬱ストーリーを彷彿とさせる伝奇モノ。この人やっぱエグイよ! 良い感じに好感持たせてザクザク殺していくよ! うっかり藤咲とか千紗都に萌えているといつ死ぬかドキドキします。萌えシチュとか、主人公に告白しそうになったらそれ死亡フラグな。

さて占いによって村を支配している旧家・朽葉嶺家。その四姉妹の許婚として子供のころから共にすごしてきた少年・マヒル。四姉妹の十六歳の誕生日、すなわち四姉妹のうちの一人だけが占いによって選ばれ、妻となる継嗣会の儀式が迫る。時を同じくして村で起こる謎の猟奇殺人。その調査のためか、謎の怜悧な少女・イタカがマヒルの前に現れる――

表紙の冷たい感じの少女がイタカなんですが、表紙をめくると日向のような笑顔を向ける同一人物のイラストが。これはまさか二重人格かーっ! この時点で期待がフルスロットルですよ。二重人格いいよ二重人格。3×3EYESの時代から好物なんです。で、実際その通りに二重人格。やさしいほうの人格は藤咲。いいなぁ、藤咲。漂う自己犠牲の雰囲気が特に。

タイトルの死図眼はイタカの能力。相手をスケッチすることによって…という能力が序章で明かされるのでバトルモノかと思いきや、どちらかというとサスペンス的なストーリーでした。イタカ・藤咲の出番も思ったより少なくて、主人公が村と母親に不穏なものを感じ、姉妹を守ろうと翻弄されていくのがメイン。この閉鎖された村の不気味さ、伝奇モノの容赦ないエグい展開がよく出てます。エグさでは『火目』も相当だったけど、あの頃に比べて読みやすさとキャラの魅力の点で断然成長してるのでかなり面白い。鬱展なので人を選んでしまうけど、これは上半期の新シリーズ部門では投票しちゃう感じだなぁ。

あ、ちなみに四姉妹の好みは千紗都が一位なのは鉄板として、次点が美登里で、亜希、奈緒という感じ。この四姉妹で誰が好きか考えておくと良い感じに絶望に叩き落されてオススメ(ぉぃ。それにしても千紗都はビジュアル的に最初から好みだったんですが、ちょっとしたツンデレ動作が良い上にストーリー的な役どころも非常に好みです。藤咲と迷うところだ(謎

イラスト。すっきりとして綺麗めな線で、かつ表情も良く出ていてかなり好みなり。レイアウトも色々なパターンがあって、この人結構良いんじゃね?

余談。「ソツなくて良い滑り出しなんじゃね?」と個人的には割と好評価だった一迅社文庫なんですが、どうやら市場にあまり入荷されてないらしいですね。bk1も割とすぐ取り寄せになっちゃったしなぁ。『ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。』は買うつもりだったんですけど難しいかなぁ。他にも評判が良ければ買うつもりだったんですがその評判すらあんまり出てこなそうだなぁ。この2冊を読む感じ、結構期待できそうなレーベルなんだけど。

死図眼のイタカ (一迅社文庫)

死図眼のイタカ (一迅社文庫)